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山のあれこれ

山でみつけた生き物たち

調査で山中を駆け回っていると色々な生き物たちに出くわします。こういう出会いは割と一期一会で、なるべく写真を撮るようにしています。珍しいもの、きれいなもの、なんじゃこりゃ?というものまで、この夏に撮れた生き物たちを載せていきます。

オトシブミの揺籃

葉っぱを器用に巻いて折りたたんで、幼虫の食料+ゆりかごを作るオトシブミ。写真はイラクサ科のアカソで作られた揺籃(ようらん)。調査中に一度見つけたら、至る所で目にするようになりました。アカソで作るから、おそらくはヒメコブオトシブミだと思われます。種類によって利用する植物・葉の切り方巻き方が違うので、比べてみるとそこそこ面白い。
幼虫が葉の中で孵化すると、周りにある葉を食べるわけですが、その際に出る糞をきれいに並べて保管して、もう一度食べる行動をします。これは一度の採食では十分な栄養を得ることが出来ないためです。ウサギみたいですね。
また、成虫になるために必要なエネルギー量を計算すると、どうしても葉っぱ1枚では足りないようなんです(葉っぱ1枚をまるまる食べるわけではないので、見かけよりも採食可能な量は少ない)。不思議なフミの中で何が起こっているのか、まだまだ分かっていない生き物です。

タマムシ科 ウバタマムシ

金沢市の山奥で見つけたタマムシの仲間。枯れた松の幹でジッとしていました。生きたタマムシの仲間を野生下で見たのは初めてです。タマムシと言われてイメージするヤマトタマムシとは違い、地味な見た目をしていますが、よく見ると光沢があります。たぶん顕微鏡や接眼レンズとかで見ると綺麗なんでしょうね。

キリギリス科 ヒメギス

車で轢きそうになったヒメギス。見つけた時ウシアブを食べてました。そっか、君ら肉食するのか。どうも調べてみると、成長するのにたんぱく質が必要みたいですね。その調子でアブをたくさん捕まえて食べてほしいものです。あぶないから道路には出ないでほしい。産卵管がないのでオスですね。

ふと頭上の枝を見てみると、ヒグラシが留まっていました。でも様子が変です。死んでます。よく見ると体の節から白いカビのようなものが噴き出していました。どうやら、ボーベリア菌という菌に侵されていたようです。生きた昆虫に感染し、体内から水分を奪って硬化させて死に至らしめるヤツだそうで・・・。えぐい。カブトムシ・クワガタムシなどにも感染するので、甲虫を育てている人にとっては厄介な菌ですね。

ナナフシ科 トビナナフシ

金沢の山奥で見つけた翅の長いナナフシ(七節)の仲間。七は「たくさん」って意味で、七つの節があるわけではないらしい。なんだコイツ
翅があるが、実際に飛ぶかは調べたが分からなかった。なんだコイツ。
かなり不思議な生き物で、基本メスしかいなく単為生殖・植物のタネみたいな硬い卵・細い見た目で力持ち(自重の40倍の重さを運搬可能→ミュンヘン工科大学で産業用ロボットへの応用として研究されている)などネタに困らない。なんだコイツ
最近では、鳥に捕食されることで卵を運んでもらい、分布域を広げていることが分かった。卵が硬いので消化されない→糞中の卵から実際に幼虫が孵化した。被食散布とか何なんだよまんま植物じゃん。なんだコイツ。
神戸大学理学研究科 末次准教授など→ (https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2018_05_29_01.html)

宇宙からきた生物とか言われても驚かない

スズメバチ科 ヒメスズメバチ

毎年死者を出している森の暴れん坊。最近は海外でも被害を出し始めた。
写真のヒメスズメバチはそんなスズメバチの仲間の中で最もおとなしい種。
Vespa ducalis(指導者、公爵) pulchra(美しい)」と、学名をみるとスズメバチらしからぬ名前になっている。おしりが黒いのが特徴だが、ぶっちゃけ飛んでる最中に見分けるのは難しい。蜂を見たら慌てず騒がず身をかがめて退避するのが一番。服はもちろん白で。頭も白いタオルで覆いましょう。
全身黒ずくめだと、面白いように蜂が寄ってきます。いくら正しい対処をしていても黒が全てを台無しにします。ホントにやめましょう。

日本最大のトンボ。エメラルドグリーンの複眼は死ぬと黒くくすんでしまう。もし死後も綺麗なままだったら、玉虫厨子みたいに装飾に使われていたのかも。
最近の研究で、一定の区域を往復するのは縄張り維持ではなく、オスは羽ばたくモノすべてをメスとみなしているので、だれかれ構わず追いかけまわしていることが分かったらしい。一気にイメージ変わった。

元気のなくなったメスを捕獲。おしりの先に伸びているのが産卵管。
トンボやチョウを持つときは、写真のように翅ではなく身体(胸)を持つようにしましょう。小さい種だと難しいですが、この方が負担が少ないです。

アゲハチョウ科 ナミアゲハ

最も一般的なアゲハチョウ。比較的見るのは簡単。幼虫から成虫まですべてがカワイイ。終齢幼虫がたまに道路を横断する姿をみるが、ほんとにやめてほしい。
蛹のなかで体がドロドロに溶けて再構築されるとか、不思議すぎる。

アゲハチョウ科 ミヤマカラスアゲハ

夏の時期になると濡れた道路で給水する姿をよく見かける。全然逃げない子もいるから轢きそうになるし、実際轢かれている子もいる。頼むからもっと早く逃げてほしい。カラスアゲハに似ているが、後翅にある弓上の白帯で見分けられる。
正直カラスアゲハの方が見る機会は少ないように感じる。

アゲハモドキガ科 アゲハモドキ

ジャコウアゲハかな~って思ってたら蛾でした。まあ蝶と蛾の生物学上の明確な区別なんてないですけどね、触覚だとか翅の模様だとかで分けても必ず例外は存在するわけでして。人間の勝手な線引きでしかないのです、どっちもチョウ目だから仕方ないね。
話をもどして、このアゲハモドキはジャコウアゲハに身体を似せています。いわゆる擬態です。ジャコウアゲハの幼虫は有毒のウマノスズクサ類を餌としていて、成虫になってもこの毒が体内に残っています。なので、ジャコウアゲハを食べた捕食者はそれ以降ほかのジャコウアゲハを食べることをしません。よってアゲハモドキは(クロアゲハやオナガアゲハなども)捕食されないように身体をジャコウアゲハに擬態させているのです。このような擬態はベイツ型擬態と呼ばれます。

ヤママユガ科 クスサン(おそらく)

開長10㎝の大型のガ、クスサンの幼虫と思われる毛虫を発見。この毛は全くの無毒なのでさわっても大丈夫。ガはある一定の大きさから可愛く見え(ヤママユガとか)、ある一定の大きさを越えると恐怖を覚えると思っている(ヨナグニサンとか)。ヤママユガ科はカワイイ系が集まっているが、成虫の口吻は退化しているため、幼虫時代に蓄えたエネルギーを使い果たして死ぬ1週間の間につがいを見つけて交尾しなければならない。羽化してからは常に時間との勝負。
そんなんでよく今まで生き延びてきたな。

ヤママユガ科 オオミズアオ

事務所のそばで発見。普段何気なく歩いている道にも探せば生き物はいるのです。バラ科・ブナ科・カバノキ科ほか、多くの樹木を食べるため市街地でも見ることが出来る。この子は翅がもうぼろぼろで長くはないかもしれません。うすい青の翅がきれいなガです。旧学名「Actias artemis」にはギリシャ神話のアルテミスの名が入っていました。

ウ科 カワウ

大日川でよく見かけるカワウ。河口や潟だけでなく山の方でも見るようになりました。時速50~60㎞の速さで飛びます。たまたま車で並走することがあって計りました。最近は個体数が増えてきているようで問題も起きているとか。何事もほどほどが一番ですね。鵜飼に使われるのはウミウなので、本種とは別です。

タカ目ミサゴ科 ミサゴ

タカの仲間で主に魚食性の猛禽類。タカ科に含めるかミサゴ科にするかで分類がぶれてる。海岸・湖沼・河川付近に生息している。白山麓でも見ることは可能。ホバリングしたり、捕まえた獲物の頭を先して縦にして運んだりと芸達者。この子、空気抵抗を分かっている。
ミサゴは英語で「Osprey」。そう、米軍のティルトローター機の名前です。これがニュースで流れると、鳥好きの頭の中はミサゴさんでいっぱい。

お腹側が白いので、トンビとかと区別するのは簡単

カワセミ科 ヤマセミ

山地の渓流や湖沼に生息する。日本のカワセミ類最大の鳥で、キジバトより大きいです。カワセミのイメージで出会うと正直驚きます。絶対数が少ないのと、非常に警戒心が強くなかなか出会いないので人気の鳥。おそらくこの子は若いので、警戒心は低めでした。白と黒のモノトーン。無彩色の鹿の子斑はもうカッコイイ。
余談ですが、石川県でカワセミが見たい人がいらっしゃいましたら、早朝の兼六園をおススメします。あそこだったら確実にカワセミさんに会えます。早朝なら入園料も無料!

オスは頬と胸元に茶色が混じるので、この子はメス。雨で冠羽が少し寝ていますが、それでもカッコイイ。

何気なく見ている生き物たちも、実は不思議な生態をもっているものです。ちょっと知っているだけでも、いつもの景色が違って見え、毎日が楽しくなったりするかもしれません。筆者は毎日が楽しいです。

野生動物管理担当

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